久々のSS
どうも、おはようございます。Soutoです
今回、Soutoが最近プレイしてるWTRPGというジャンルのゲーム「Catch the sky」の手持ちキャラを使い
久々に書いた小説もどきです(^^;
よければ読んでください
そして、感想など頂けると嬉しいです
ただ、もっと短くする予定が時間かかりすぎな上に1万字オーバーかい!!
ううっ、上手く書くのって本当に難しいねorz
では、続きからどうぞ〜
今回、Soutoが最近プレイしてるWTRPGというジャンルのゲーム「Catch the sky」の手持ちキャラを使い
久々に書いた小説もどきです(^^;
よければ読んでください
そして、感想など頂けると嬉しいです
ただ、もっと短くする予定が時間かかりすぎな上に1万字オーバーかい!!
ううっ、上手く書くのって本当に難しいねorz
では、続きからどうぞ〜
あれが運命の日
その日の冬の青空はいつもよりも澄んでいるに思えた。
「‥‥い‥‥おい、日野ぉ、聞いてるか?」
「あっ、わるいぼ〜っとしてた」
しっかりしろよとクラスの友人が言う。それに曖昧に笑って答えるというのが俺の日常だった。教室の雰囲気はのんびりしたものだ。今、宇宙人と戦争の真最中とはとても思えない。
俺だけじゃない、クラスの人間のほとんどが戦争をどこか対岸の火事と捉えてる。
ただの一高校生に戦争をどうにかする力なんてないのだ。そんなひ弱な学生の関心事は期末試験直後のクリスマスだ。戦争の影響を認識でるのはプレゼントの値段とかかる消費税が数年前より高くなってるくらいだ。
「日野もクリスマスはヒマなんだろ、どうだ、一緒にこれでも」
友人が口の近くで手を軽くて握ってカラオケに行かないかと誘ってくる。
「あのな、俺がヒマだって決め付けるなよ。一緒に過ごす相手いるかもしれないだろ」
「いや、オマエに限ってそれはないと信じている」
いやな信頼の寄せられ方だ、確かに相手が居ないのも事実だが。
「だいたいだな‥‥」
さらに何か言い続けようとした友人の言葉を遮って教室のドアが勢いよく開けられる。
「日野!日野 竜彦(ヒノ タツヒコ)はいるか!至急、教員室までこい」
「げっ、生活指導の岡田だぜ。オマエ、何かやったのかよ?」
そんなもの俺の方が聞きたい。俺はこれでも優等生‥‥のはずだ。多分。
呼び出されると連れて来られたのはスチール机と乱雑な資料の並ぶ教員室ではなく、無駄に豪華そうに見える机や観葉植物のある校長室だった。
その部屋に居たのはタヌキの様に太った校長と狐よりも細い教頭、それに加えて見慣れない軍服を着た人間が二人居た。
「彼がそうですか?」
「ええ、彼が我が校の誇る優秀な生徒です」
「‥‥‥‥」
ハッキリ言って、俺自身も自覚はあるが自分の性格がお世辞にも普通とは言いがたい。それに加えて頭の出来もさほど良いとは言えない。自分で冗談にするならともかく、あの教頭に言われると背筋に寒いものが走る。
「失礼、私はUPCのトーマス・ヘッセ中尉だ、よろしく」
「はあ」
外人とは思えない流暢な日本語で挨拶をするとトーマスさんは手を差し出してきた。その手をなんとなく握り返す。
UPCとは現在宇宙人と戦う国際平和維持組織の略称だ、ちなみに英字の方のつづりは忘れた。
その宇宙人と戦う組織の人が俺に何の用事なのか。
「竜彦君、きみには能力者としての適正が認められた」
「へ?」
俺の疑問の声など聞えないかのごとく一方的に通達されていく事実。
「本日、一二:〇〇をもって君の身柄はUPC及びULTが預かる事となった。何かと大変だとは思うがよろしく頼むよ」
俺が覚えてるのはそこまでだ。後は何を言われたかもまったく分からない。ただ、先生達の顔が笑顔だったのと、軍人さんたちの顔に少しの憐憫があったように思えたぐらいだ。
その日は、とっても空が青かった。
☆
「っえ‥‥ぜっ‥‥うおっ‥‥‥‥」
総重量六〇キロという様々なアイテムが息をつまらせてくる。
そしてはるか前方には先輩、じゃなくて先任の兵隊さん達の背中が見える。
あれから一ヶ月、俺はUCPの新兵訓練所にいた。ちなみにこの一ヶ月の間に何をやってたかというと、今みたいに走っていただけだ。
いや、二週間前の方が何も背負わなかったからマシかもしれない。
「ぜぇ‥‥ぜぇ‥‥ぜぇ‥‥」
息が荒い、今にも胃液を逆流させそうだが生憎と吐くものが残ってない。軍人てのは、よくこんなに走ってて飽きないな。
そして、今日もご機嫌が斜めな軍曹殿に叱り飛ばされて朝食を取りに食堂に行く。これがこの一ヶ月の日課だ。
「‥‥‥‥‥‥」
本日の献立は、乾燥卵のスクランブルエッグと傷む直前のレタス、薄いたまねぎスープにセメント並みに硬いパンだ。
せめて、もうちょっといい物を用意してもらえないかと思うが、半人前分も働けない俺たちには十分過ぎるご馳走だそうだ。
「‥‥はぁ」
思わずため息がもれる。いきなり戦う為の力をつけろと言われても困る。
昨日まで普通の学生だったはずだ。それに自慢じゃないが俺自身はケンカが弱い。それが何故、こんな事になったのかとても戦争なんかして生き残る自信がない。
「‥‥はぁ」
再度ため息をついていたら、なんとはなしに他の場所から話し声が聞える。
「アレが例の能力者か?」
「らしいぜ、まだガキだな」
この頃は異様にそんな話し声が聞える。もしかすると疲れてるのかも知れない。疲れてる時は特にネガティブになりやすいらしいから。
俺は急いで自分の分の飯を詰め終えるとさっさと食堂を後にした。
だけど、俺は気付かなかった。そのささやきが自分から二十メートルは離れた場所で交わされたということに。自分が変わり始めてるということに。
☆
日本から連れ出されてもう二ヶ月、時間はあっという間に過ぎて行った。来月には練成期間が終了したらカンパネラ学園という所に行く事になるらしい。
今はその前の貴重な休日だ。自分に支給されたバイクに変形するパワードスーツAUKV『リンドヴルム』に乗って野外に来ていた。いっその事ここから逃げ出してしまおうか。
だが、今の俺に行く当てなんかない。いや、行ける場所がない。
能力者になるにあたって身体に埋め込まれた『エミタ』、埋め込まれた者は絶大な能力を得るが、代償に心身共に大きな負担を強いられる。そのせいで理性を失い暴走してマンガの怪物のように暴れまわる奴もいるらしい。
そういう事がないように月に一度は健康診断という名の調整が義務付けられるほどだ。そんな調整や検査が個人で出来る知り合いなんていない。まるでエミタというのは奴隷の首輪のようだ。
「これから、どうするかな‥‥」
遠出してきた丘の上で空と雲をながめながらぼんやりと考えても結局はさっきまでの思考の繰り返ししか出来ない。自分でもハッキリ判るほど足が地に着いてない。
覚悟は決まらず、だが、逃げる事もできず。出てくるのはため息だけだった。
――――――――――――――――――っ!?
(「!?」)
切り裂くような金属の擦れる音が耳に突き刺さる。
とっさに腹ばいになって伏せたのは曲がりなりにも二ヶ月の訓練のたまものだった。そのまま、今さっき音のした方角に目を走らせる。
遠目に黒い煙が上がっている。身体能力が軒並み強化されていても完全に目視できる距離ではないので携帯していた双眼鏡を覗き込む。
その先に見えたのは傷だらけの小さなトラックとそれを追う三匹の狼だった。
いや、普通の狼ではない普通の狼がトラックに追いついたりしないだろう。となれば、実物を見るのは初めてだったが、あれが異星人バグアの作り出したキメラという怪物だろう。
今なら、自分のいる場所からは距離もあるしリンドヴルムを使えば余裕で逃げ切れるだろう。
「‥‥‥‥」
だが、身体が動かない。頭の中では今の自分に出来る事などない、という言葉がしか浮かんでこないのに身体の方が動く事を、この場から去る事を拒否している。
(「何してるんだよ、俺は‥‥」)
自分が今、何をどうしたいのかがわからない。
―――――――ァァッ!!
常人なら聞き逃してしまう音を強化された聴覚がとらえる。双眼鏡を覗き込むとトラックがタイヤを切り裂かれて横転していた。そこに狼のキメラ達が群がっている。
その光景を見た瞬間、はじかれた様に身を起しリンドヴルムに跨りフルスロットルで発進させて横転したトラックへ向けて矢のように突き進む。
「ちっ!」
まともに戦えないのに何をしているのか問いたくなる。
「だけど‥‥逃げるわけにいかないだろう!!」
一分と立たないうちに横転したトラックを覚醒化した影響で翠に変色した瞳がとらえる。リンドヴルムを走らせたままでマウントしてある拳銃のクリメタルP−38を抜いて構える。
その頃にはキメラ達もこちらに気付いてこちらに顔を向ける。普通の狼と違い逃げるような事はない。
だが、それがヤツラにとって致命的な隙になり、こちらにとって最大のチャンスになった。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!!
連続で四発撃った。身体の芯まで届くような重い反動と低く響く銃声が耳に届く。
最初の一発がトラックに上っていた一匹を捉え吹き飛ばす。さらに空中で三発、明らかなオーバーキルだったが、竜彦の方にも気にしてる余裕は無い。
その銃撃に驚いた残りの二匹が左右に分かれる。だが、こっちにも追う余裕はない。せいぜいトラックに激突しないように避けるぐらいだった。
だが、その向こうには雑木林が待ち構えている。このままスピードを落とさなければ木に激突する。だが、スピードを落として方向転換すれば残りのキメラが襲い掛かってくる。
「なるようになれ!!」
そのままスピードを落とさないで木へ突っ込むと同時にリンドヴルムを変形させる。
「っ!?」
メキメキという音と一緒に胴体ほども太さのある木が折れていく。蹴りつけた足から全身に痺れるような痛みが伝わっていく。
だが、その痛みが引くのを待つ暇もなくキメラ達が動きを止めた自分の方に飛びかかってきた。
「‥‥‥‥」
戦いの中では一瞬でも動けない態勢なるのは避けるべき事だった。特に今は自分一人しかないのだ、動きを止める事はそのまま、敵の反撃を許す事に繋がる。
だが、そんな危機的状況なのに頭は驚くほど冴え渡っている。先程の恐怖心もウソのように消え去っていた。
キメラ達が飛び掛る寸前、リンドヴルムの脚部に青白いスパークが生じる。竜の翼、AUKVを装着している時にドラグーンが使える特殊な移動技だった。能力者になった直後に選んでエミタに登録した技の一つだ。
一瞬後には二、三十メートルは離れた場所で片ヒザついて射撃姿勢をとっていた。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!
装弾数八発のうち残った四発も撃ち尽くす。片方に三発、そのうち一発は頭に直撃してキメラは体液を飛び散らせて絶命した。もう一匹は身体を掠めた程度で回避した。
攻撃を避けられはしたがまだ距離がある。リロードしていっきに片を着けるつもりだった。
「なっ!?」
リロードしようとしてリリースボタンを押しても弾層が排出される気配がない。その隙にキメラが体当たりをぶちかましきた。
「ぐっ!」
体当たりをモロに食らってそのまま吹き飛ばされて倒れる。ついでに銃も投げ出してしまった。
その上、倒れた所にキメラがのしかかってくる。なんとか、噛み付かれるのは防いだがこちらも起き上がれない。
「っめるなあ!!」
予備の武器として携帯していたアーミーナイフを抜いてキメラの腹に突き刺した。堪らずにキメラが首を持ち上げた瞬間に力任せに身体を起して竜の翼を発動する。ナイフを突き刺したまま木に体当たりしてナイフをさらにキメラの体の奥へと突き刺した。
「――――――ッガ」
しばらく痙攣した後にやっと動かなくなる。実際に戦った時間は一分前後なのにその何倍も時間が経った気がした。ともあれ、これで一安心だ。
横転したトラックの方に近づいてみる。
「うぷっ」
はじめてみる戦場の死体だった。猛スピードで転倒して時に運転席に叩きつけられたのか何箇所も潰れて肉が裂けてグチャグチャになっていた。それが二体、なんとか、吐かなかっただけ自分にしては上出来だ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
なんで、もっと早く動かなかったのか、そんな考えが頭をよぎるがもう遅い。自分に出来るのはせめて、埋葬ぐらいかもしれない。
「とりあえず、車から出すぐらい良いよな?」
トラックを起すために近づくと微かに自分以外の息遣いが聞える。
(「!?」)
急いで運転席の中を見回す。そうすると女性らしき死体の下にある籠に目が留まる。
「まさか!?」
ヒビの入った窓ガラスを慎重に壊していく。死体をずらすとそこには、ゆりかごが抱かれるようにして無事だった。血まみれだが奇跡的に潰れていないようだ。
「‥‥よし!」
ゆりかごを取り出そうとするが遺体が潰れた車体に挟まっている。無理に動かす事はできればそうすると遺体を破損する恐れがある。出来るなら、それはしたくなかった。
何か道具をと考えれば、一番使えそうなのはキメラに刺したままのナイフがある。
「これで‥‥」
決して、良い結果に終わった戦闘ではなかったが一人でも命を救えた事が心を軽くしてくれた。キメラからナイフを抜き取ろうと手を伸ばす。
だが、その伸ばした手がナイフを抜き取る事はなかった。
「がぁっ!?」
不意の衝撃と一緒に風景が一瞬で変わる。自分が吹き飛ばされたと理解したのは地面を三回ぐらいバウンドしてからだった。
体を起すとさっきまで居た場所に巨大な狼がいた。
「さっきの奴らの親玉かよ」
下手を打った。敵を倒して完全に油断していた。おかげで全身がバラバラになりそうなぐらい痛む。
(「!?」)
身体を起そうとして立ち上がれない。痛みは全身にあるが立てなくなるほどではない。
即座にAIから送られてくる情報を検索して網膜に情報が直接映しだされる。
結果は、リンドヴルムの脚部のコンディションを表す部分が真っ赤に染まっている。他にも生身と全体の複数個所にイエローシグナル、今の状況では考えられる限り最悪だ。
さっきの三匹にすら絶好の状況で戦いながら手間取ったのだ。その上、戦いに最も重要な動きの要である足が動かない。相手は体重も膂力もスピードも先程の三匹とは段違いだ。
「くっ」
獲物が反撃して来ないと知ると巨狼はいっきに突撃してくる。
それを無様に転がって避ける。なりふりなど構って張られない。まるで剣のような牙の群れがすぐそばを通り過ぎる。
だが、安心できない。即座にヒザ立ちの姿勢で身体を起し巨狼に向き直る。回避できないわけではない。どうにかして反撃の糸口を掴むまではこれで凌ぐしかなかった。
巨狼が向きを変えこちらに狙いを定めてくる。
ありがたい。今の足の動かない状況では狙いを定められるよりも連続で攻撃を仕掛けられる方がよほど厄介だ。
(「いける!」)
腕に込めて横に飛んで回避しようと瞬間だった。
「――――」
真後ろから聞えた赤ん坊の泣き声が回避した時に巨狼がトラックに激突する光景を思い起させた。とっさに体が動きを止める。
その時には巨狼の姿が視界を埋め尽くしていた。
「――っ!?」
内臓が押し潰されるような感覚と骨の軋む音が頭の中を埋め尽くした。どんな跳ね飛ばされ方をしたなどと確かめる余裕もない。急速に遠のく意識を保つので精一杯になった。
かろうじて認識できる視界には、リンドヴルムのコンディションモニターがオレンジとイエローでまだらに染まっていた。
そして、巨狼は動かなくなったこちらに興味を無くしたのか泣き叫ぶ赤ん坊の方へのゆっくりと向かっていく。
「っざけんなよ!」
リンドヴルムが嫌な音を立てながら上体を起す。砂嵐が混じりはじめた通常スクリーンの向こうに巨狼の姿を認めて近くにあった石か何かを拾って力の限り投げつける。
たぶん、子供の投げる野球ボールよりも遅く勢いのない石が巨狼に命中する。キメラの表情の読み方なんか知らないが多分、うっとうしいと思ったのだろう。巨狼が目標をこちらに変えた。
「‥‥ああそうだ、それでいい。こっちに来い、怪物」
どこで聞いた知識だったか、生き物は危機に陥ると普段抑えている力を全て使い始め時間が数十倍に感じられるという事態が起こるらしい。
(「‥‥ああ、今がそうなのか‥‥」)
力を込める細かい動作までハッキリと分る。そして、自分がもう体を動かすための力がない事も同時に悟っていた。
死んだな
悠長にそう思った。一つ心に浮かんだ未練は、高校の購買部でやきそばパンの争奪戦に勝てなかった事だった。
思わず、苦笑がもれる。死ぬ間際に考える事にしては下らな過ぎる。だが、別の事を思い出すヒマもなさそうだった。巨狼が自分目掛けて飛び出してくる。あと、数秒後には自分はこの世にいないだろう。
ターーーーーンッ!!
一発の銃声が世界を切り裂く。遠かった風景がいきなり元に戻る。
「‥‥なんだ?」
さっきまで自分めがけて突っ込んでこようとしていた巨狼の体が唐突にブレて倒れた。
「はああああああああああっ!」
剣を振りかざした男が空から掛け声と共に降ってきた。その剣が巨狼へと振り下ろされる。突然の事態に何が起こったのか頭が追いつかない。
「おい、大丈夫か?」
絶命した巨狼を後にして男が何か言っていた。それが自分にかけられた言葉だと理解するのに十秒以上掛かった。
『――キメラの方はどうなった?』
「っと、ああ、終わったぜ。それより‥‥」
男が通信機に向かって話しかけていた。何を話してるのかは分らなかったが、一つだけ分った事がある。
(「‥‥ああ」)
俺は助かったんだ。
その事を認識したらだんだん、視界が暗くなってどっちが地面だったかも判らないくなっていた。
「ええ!?おい、しっかりしろ!」
どさっ、という音と何か叫ぶ男の声が聞える。だけど、今はどうでもよかった。
今はただ、何も気にしないで意識を闇へと落とした。
☆
この前の事件から1ヶ月たった。
「このクソ虫共、今日は俺にとって最高の日だ。何が最高か分るか?今日でクソ臭い貴様らと晴れてお別れ出来るからだ」
俺は今日の午前中で訓練を終えて明日にもこの訓練所を後にしてラスト・ホープ島に向かうことになっていた。
あの時の事件の顛末だが、銃のマガジンが抜けなかったのは、リンドヴルムを装備した状態で強く握りすぎたせいでグリップの辺りのフレームが歪んでいたらしい。リンドヴルムの方もいきなり脚部に負担掛かったせいで関節の一部が歪んだのが動けなかった原因だったらしい。
フレームは無事だったので他の箇所のダメージも簡単な部品交換で修理できたので三日後には元通りだった。ついでに言えば、俺自身も一般人じゃ重傷間違いなしでも能力者にとっては、たいした事のない怪我ですんでいて翌日には、一日休んだ追加分の課題と一緒に訓練を再開させられた。
今回のような事件は珍しくもない。現在は世界中のいたる所で起きているありふれたものだ。だが、今回はたまたま近くに俺やトラックに乗っていた家族が運悪く居合わせてしまった。
本当にただそれだけの事だった。
それからは本当にいつも通りに吐きそうなほど走らされて、銃を撃って、格闘技の訓練受け、戦術や近代の歴史についての授業を受けていた。
いや、少しだけ変わった事があった。今の状況が望ましいとは思えないのに逃げ出す気がまったく起きなくなった事だ。
「‥‥本当、どうしたんだかなぁ」
「こらそこ!何をしてる!?全員その場で腕立て百回!!」
ついついボケッとして軍曹に怒鳴られる。しかも、俺のせいで腕立て追加になって一緒に訓練していた奴らから突き刺さる様な視線がプレゼントされる。
「と、普段なら言うところだが今日は特別に勘弁してやる。有り難く思え」
三度の飯よりも俺たちに胃液を吐かせるのが好きな軍曹からそんな事を言われて全員がきょとんとした。
「ふっ、これ以上、何か言っても貴様らのカスほどもない脳みそじゃ、憶え切れんだろうからこれで最後にしてやる」
最後まで軍曹の物言いは上から目線で俺たちを人間扱いしないものだなおい。
「今日でここの反吐地獄からは開放されると思って貴様ら浮かれているが、よくそのカスミソに刻み込んでおけ。本当の地獄は貴様らがこれから向かう先にある。今日までの事が天国に思えるほどの地獄がな。今此処で雁首揃えてる奴らが、また雁首揃えていられるとも限らん」
淡々と語る軍曹の様子は俺達を三ヶ月みっちりシゴキ上げてきたサディストの言葉とは思えなかった。それはこの世の地獄を体験した人間だけが持つ独特の雰囲気、とでも言うのだろうか、しみじみと粘り付くような不安が足元から這い上がって来るような気さえした。
「この戦争が終わった時に貴様らのうちの十人に一人が五体満足で生き残ってれば最高なのが今の世界の現状だ。お前達のような若い奴らを戦争に向かわせなければならないのは俺たち大人の不甲斐なさだ。大いに恨め、そして、世界を憎んで良い。だが、決して生きるのを諦めるな。戦場では諦めた奴から命をなくすぞ」
俺達のほとんどが死んでしまうのが今の世の中らしいが、言葉の意味は理解できてもそれを実感はしてない奴がほとんどだろう。俺自身も1ヶ月前の事件がなければ、多分、その一員だったはずだ。
「以上だ、解散!!」
その一言で訓練生たちは三々五々に散っていった。明日には全員どこかの基地や戦線に投入されるのだろう、三ヶ月だけの付き合いだったがなんだか寂しくもある。
「やあ、久しぶりだね。少年」
俺も少ない荷物をまとめるために兵舎へ向かう途中で意外な、というほどでもないが人と再開を果した。トーマス・ヘッセ中尉、階級的には俺よりはるかに上だが、俺を今の訓練所に叩き込んでくれた張本人なので敬意は持てそうにない。
「なんですか?」
敬語は使ってはいるが不満を隠しきれてないのは自分でもハッキリ分かる。
「まあ、そう構えないでくれ。今日はたまたまだ」
「そうですか」
「ここで立ち話もなんだ、どこか、落ち着ける所にでも」
俺たちは空箱を広場の端に置いただけのベンチに腰を下ろす。一応、コーヒーと言う名前の黒いだけの湯を持ってきた。
「最近は御活躍だったらしいね」
「嫌味ですか?」
一ヶ月前のキメラとの戦闘は活躍と言えるほど誉められるものじゃないのは自分でも承知している。
「初陣でキメラ三匹は上出来だよ。もう少し、誇ってもよいだろう」
「そうですね」
むしろ、飛び出すのが遅くなって人を死なせた事の方が心の底から後悔してる。多分、この罪悪感とは一生付き合っていくことになるかも知れない。
「君が守った赤ん坊は、特に異常はないそうだよ」
「‥‥そうですか」
心うちを見透かされているようでなんだか腹立たしい。だからと言って、今のイラつきをぶつけるのもお門違いだ。こんな状況に放り込まれたて納得がいってなくてもだ。
「‥‥君の責任ではない。そう落ち込むな」
「じゃあ、誰の責任ですかっ!?」
「強いて言うなら、君にその役目を押し付けるしかない我々の無能の責任だ‥‥」
「じゃあ、なんで!!」
俺をここに入れたのかというセリフを途中で飲み込む。
「そうだ、我々は君達のような者には才能があるから戦えと言う、君達が抱く気持ちなど全て無視してな。何故か、それが今の世の中に必要だからだ!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「だがね。世界の全ての人間がただ無責任にそう願っているわけではないのだよ。戦争に出るのは軍人の役目だ。国やそこに住む人々の財産と平和を守るため、ひいては自分達の大切な人間のためにね。そして、そのために時には自らの命を捨てるのも、その中には君達のような子供も含まれているはずなのだ」
最初に会った時とはまったく違う顔を見せる中尉に思わず言葉が出なくなる。その表情も悔恨、悲哀、憤怒と様々な感情が混ざりあっているようだった。
多分、それこそが中尉の、トーマス・ヘッセという男の軍人としての矜持なのだろう。
「ふむ、年甲斐もなく熱くなってしまったね。君を今の状況に追い込んだ私にどんな思いを抱いても構わない。だが、憶えておいてくれ。誰もが、漫然と君達を生贄に捧げるのをよしとは思っていないと言う事をね」
自分でも信じられないくらい、中尉の言葉を穏やかな気持ちで聞いていた。
まったくだ、まるで世界で良心があるのが自分だけみたいな慢心があったのだろう。誰にだって欲しくても届かないものはある。
それが自分にとって普通でいる事であり、隣の男には理不尽に抵抗するために力と言うだけだ。だから、精一杯の気持ちでこう言って席を立った。
「‥‥分りました。憶えておきます」
「‥‥君は、いい傭兵になりそうだな。正規軍への編入を考えるべきだったかな?」
「たぶん、そっちじゃそっちにいたら脱走してると思いますよ」
席を立った時にはお互いに苦笑すら浮かべながら言葉を交わしていた。もう、お互いに会う事もないかも知れない。それでも、今日の会話は忘れる事なく自分の心の中に刻まれた。
今はその事実だけで十分だ。
「貴君の武運長久を祈る!」
中尉も席から立ち敬礼で見送ってくれた。俺はと言えば、ただ無言で少しだけ拳を掲げただけだ。
だが、それでもお互いに百万の言葉を交わすよりも気持ちは通じたと思えた。
そして、俺は荷物をまとめるために兵舎へと足を向ける。
空を見上げれば今日も、空は青く澄んで広がっている。季節は三月、高校の同級生たちはもうすぐ二年生だ。そして、日本ならそろそろ桜の咲く季節だろうか、それがとても懐かしく思える。
☆
日本のみんな、いまどうしてますか?元気にしてますか?
俺はこれから戦場に向かいます。
正直、怖いです。今すぐにでも逃げ出したいです。
もっと、普通にやりたい事もいっぱいあります。
でも、納得できない事は沢山あるけど、一つぐらいは納得できる事があったから。
だから、早くこの戦いを終わらして、絶対に生き残ってやる。それが、今の俺の一番の目標だから。
その日も空は、とても青かった。
あれが運命の日 了
その日の冬の青空はいつもよりも澄んでいるに思えた。
「‥‥い‥‥おい、日野ぉ、聞いてるか?」
「あっ、わるいぼ〜っとしてた」
しっかりしろよとクラスの友人が言う。それに曖昧に笑って答えるというのが俺の日常だった。教室の雰囲気はのんびりしたものだ。今、宇宙人と戦争の真最中とはとても思えない。
俺だけじゃない、クラスの人間のほとんどが戦争をどこか対岸の火事と捉えてる。
ただの一高校生に戦争をどうにかする力なんてないのだ。そんなひ弱な学生の関心事は期末試験直後のクリスマスだ。戦争の影響を認識でるのはプレゼントの値段とかかる消費税が数年前より高くなってるくらいだ。
「日野もクリスマスはヒマなんだろ、どうだ、一緒にこれでも」
友人が口の近くで手を軽くて握ってカラオケに行かないかと誘ってくる。
「あのな、俺がヒマだって決め付けるなよ。一緒に過ごす相手いるかもしれないだろ」
「いや、オマエに限ってそれはないと信じている」
いやな信頼の寄せられ方だ、確かに相手が居ないのも事実だが。
「だいたいだな‥‥」
さらに何か言い続けようとした友人の言葉を遮って教室のドアが勢いよく開けられる。
「日野!日野 竜彦(ヒノ タツヒコ)はいるか!至急、教員室までこい」
「げっ、生活指導の岡田だぜ。オマエ、何かやったのかよ?」
そんなもの俺の方が聞きたい。俺はこれでも優等生‥‥のはずだ。多分。
呼び出されると連れて来られたのはスチール机と乱雑な資料の並ぶ教員室ではなく、無駄に豪華そうに見える机や観葉植物のある校長室だった。
その部屋に居たのはタヌキの様に太った校長と狐よりも細い教頭、それに加えて見慣れない軍服を着た人間が二人居た。
「彼がそうですか?」
「ええ、彼が我が校の誇る優秀な生徒です」
「‥‥‥‥」
ハッキリ言って、俺自身も自覚はあるが自分の性格がお世辞にも普通とは言いがたい。それに加えて頭の出来もさほど良いとは言えない。自分で冗談にするならともかく、あの教頭に言われると背筋に寒いものが走る。
「失礼、私はUPCのトーマス・ヘッセ中尉だ、よろしく」
「はあ」
外人とは思えない流暢な日本語で挨拶をするとトーマスさんは手を差し出してきた。その手をなんとなく握り返す。
UPCとは現在宇宙人と戦う国際平和維持組織の略称だ、ちなみに英字の方のつづりは忘れた。
その宇宙人と戦う組織の人が俺に何の用事なのか。
「竜彦君、きみには能力者としての適正が認められた」
「へ?」
俺の疑問の声など聞えないかのごとく一方的に通達されていく事実。
「本日、一二:〇〇をもって君の身柄はUPC及びULTが預かる事となった。何かと大変だとは思うがよろしく頼むよ」
俺が覚えてるのはそこまでだ。後は何を言われたかもまったく分からない。ただ、先生達の顔が笑顔だったのと、軍人さんたちの顔に少しの憐憫があったように思えたぐらいだ。
その日は、とっても空が青かった。
☆
「っえ‥‥ぜっ‥‥うおっ‥‥‥‥」
総重量六〇キロという様々なアイテムが息をつまらせてくる。
そしてはるか前方には先輩、じゃなくて先任の兵隊さん達の背中が見える。
あれから一ヶ月、俺はUCPの新兵訓練所にいた。ちなみにこの一ヶ月の間に何をやってたかというと、今みたいに走っていただけだ。
いや、二週間前の方が何も背負わなかったからマシかもしれない。
「ぜぇ‥‥ぜぇ‥‥ぜぇ‥‥」
息が荒い、今にも胃液を逆流させそうだが生憎と吐くものが残ってない。軍人てのは、よくこんなに走ってて飽きないな。
そして、今日もご機嫌が斜めな軍曹殿に叱り飛ばされて朝食を取りに食堂に行く。これがこの一ヶ月の日課だ。
「‥‥‥‥‥‥」
本日の献立は、乾燥卵のスクランブルエッグと傷む直前のレタス、薄いたまねぎスープにセメント並みに硬いパンだ。
せめて、もうちょっといい物を用意してもらえないかと思うが、半人前分も働けない俺たちには十分過ぎるご馳走だそうだ。
「‥‥はぁ」
思わずため息がもれる。いきなり戦う為の力をつけろと言われても困る。
昨日まで普通の学生だったはずだ。それに自慢じゃないが俺自身はケンカが弱い。それが何故、こんな事になったのかとても戦争なんかして生き残る自信がない。
「‥‥はぁ」
再度ため息をついていたら、なんとはなしに他の場所から話し声が聞える。
「アレが例の能力者か?」
「らしいぜ、まだガキだな」
この頃は異様にそんな話し声が聞える。もしかすると疲れてるのかも知れない。疲れてる時は特にネガティブになりやすいらしいから。
俺は急いで自分の分の飯を詰め終えるとさっさと食堂を後にした。
だけど、俺は気付かなかった。そのささやきが自分から二十メートルは離れた場所で交わされたということに。自分が変わり始めてるということに。
☆
日本から連れ出されてもう二ヶ月、時間はあっという間に過ぎて行った。来月には練成期間が終了したらカンパネラ学園という所に行く事になるらしい。
今はその前の貴重な休日だ。自分に支給されたバイクに変形するパワードスーツAUKV『リンドヴルム』に乗って野外に来ていた。いっその事ここから逃げ出してしまおうか。
だが、今の俺に行く当てなんかない。いや、行ける場所がない。
能力者になるにあたって身体に埋め込まれた『エミタ』、埋め込まれた者は絶大な能力を得るが、代償に心身共に大きな負担を強いられる。そのせいで理性を失い暴走してマンガの怪物のように暴れまわる奴もいるらしい。
そういう事がないように月に一度は健康診断という名の調整が義務付けられるほどだ。そんな調整や検査が個人で出来る知り合いなんていない。まるでエミタというのは奴隷の首輪のようだ。
「これから、どうするかな‥‥」
遠出してきた丘の上で空と雲をながめながらぼんやりと考えても結局はさっきまでの思考の繰り返ししか出来ない。自分でもハッキリ判るほど足が地に着いてない。
覚悟は決まらず、だが、逃げる事もできず。出てくるのはため息だけだった。
――――――――――――――――――っ!?
(「!?」)
切り裂くような金属の擦れる音が耳に突き刺さる。
とっさに腹ばいになって伏せたのは曲がりなりにも二ヶ月の訓練のたまものだった。そのまま、今さっき音のした方角に目を走らせる。
遠目に黒い煙が上がっている。身体能力が軒並み強化されていても完全に目視できる距離ではないので携帯していた双眼鏡を覗き込む。
その先に見えたのは傷だらけの小さなトラックとそれを追う三匹の狼だった。
いや、普通の狼ではない普通の狼がトラックに追いついたりしないだろう。となれば、実物を見るのは初めてだったが、あれが異星人バグアの作り出したキメラという怪物だろう。
今なら、自分のいる場所からは距離もあるしリンドヴルムを使えば余裕で逃げ切れるだろう。
「‥‥‥‥」
だが、身体が動かない。頭の中では今の自分に出来る事などない、という言葉がしか浮かんでこないのに身体の方が動く事を、この場から去る事を拒否している。
(「何してるんだよ、俺は‥‥」)
自分が今、何をどうしたいのかがわからない。
―――――――ァァッ!!
常人なら聞き逃してしまう音を強化された聴覚がとらえる。双眼鏡を覗き込むとトラックがタイヤを切り裂かれて横転していた。そこに狼のキメラ達が群がっている。
その光景を見た瞬間、はじかれた様に身を起しリンドヴルムに跨りフルスロットルで発進させて横転したトラックへ向けて矢のように突き進む。
「ちっ!」
まともに戦えないのに何をしているのか問いたくなる。
「だけど‥‥逃げるわけにいかないだろう!!」
一分と立たないうちに横転したトラックを覚醒化した影響で翠に変色した瞳がとらえる。リンドヴルムを走らせたままでマウントしてある拳銃のクリメタルP−38を抜いて構える。
その頃にはキメラ達もこちらに気付いてこちらに顔を向ける。普通の狼と違い逃げるような事はない。
だが、それがヤツラにとって致命的な隙になり、こちらにとって最大のチャンスになった。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!!
連続で四発撃った。身体の芯まで届くような重い反動と低く響く銃声が耳に届く。
最初の一発がトラックに上っていた一匹を捉え吹き飛ばす。さらに空中で三発、明らかなオーバーキルだったが、竜彦の方にも気にしてる余裕は無い。
その銃撃に驚いた残りの二匹が左右に分かれる。だが、こっちにも追う余裕はない。せいぜいトラックに激突しないように避けるぐらいだった。
だが、その向こうには雑木林が待ち構えている。このままスピードを落とさなければ木に激突する。だが、スピードを落として方向転換すれば残りのキメラが襲い掛かってくる。
「なるようになれ!!」
そのままスピードを落とさないで木へ突っ込むと同時にリンドヴルムを変形させる。
「っ!?」
メキメキという音と一緒に胴体ほども太さのある木が折れていく。蹴りつけた足から全身に痺れるような痛みが伝わっていく。
だが、その痛みが引くのを待つ暇もなくキメラ達が動きを止めた自分の方に飛びかかってきた。
「‥‥‥‥」
戦いの中では一瞬でも動けない態勢なるのは避けるべき事だった。特に今は自分一人しかないのだ、動きを止める事はそのまま、敵の反撃を許す事に繋がる。
だが、そんな危機的状況なのに頭は驚くほど冴え渡っている。先程の恐怖心もウソのように消え去っていた。
キメラ達が飛び掛る寸前、リンドヴルムの脚部に青白いスパークが生じる。竜の翼、AUKVを装着している時にドラグーンが使える特殊な移動技だった。能力者になった直後に選んでエミタに登録した技の一つだ。
一瞬後には二、三十メートルは離れた場所で片ヒザついて射撃姿勢をとっていた。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!
装弾数八発のうち残った四発も撃ち尽くす。片方に三発、そのうち一発は頭に直撃してキメラは体液を飛び散らせて絶命した。もう一匹は身体を掠めた程度で回避した。
攻撃を避けられはしたがまだ距離がある。リロードしていっきに片を着けるつもりだった。
「なっ!?」
リロードしようとしてリリースボタンを押しても弾層が排出される気配がない。その隙にキメラが体当たりをぶちかましきた。
「ぐっ!」
体当たりをモロに食らってそのまま吹き飛ばされて倒れる。ついでに銃も投げ出してしまった。
その上、倒れた所にキメラがのしかかってくる。なんとか、噛み付かれるのは防いだがこちらも起き上がれない。
「っめるなあ!!」
予備の武器として携帯していたアーミーナイフを抜いてキメラの腹に突き刺した。堪らずにキメラが首を持ち上げた瞬間に力任せに身体を起して竜の翼を発動する。ナイフを突き刺したまま木に体当たりしてナイフをさらにキメラの体の奥へと突き刺した。
「――――――ッガ」
しばらく痙攣した後にやっと動かなくなる。実際に戦った時間は一分前後なのにその何倍も時間が経った気がした。ともあれ、これで一安心だ。
横転したトラックの方に近づいてみる。
「うぷっ」
はじめてみる戦場の死体だった。猛スピードで転倒して時に運転席に叩きつけられたのか何箇所も潰れて肉が裂けてグチャグチャになっていた。それが二体、なんとか、吐かなかっただけ自分にしては上出来だ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
なんで、もっと早く動かなかったのか、そんな考えが頭をよぎるがもう遅い。自分に出来るのはせめて、埋葬ぐらいかもしれない。
「とりあえず、車から出すぐらい良いよな?」
トラックを起すために近づくと微かに自分以外の息遣いが聞える。
(「!?」)
急いで運転席の中を見回す。そうすると女性らしき死体の下にある籠に目が留まる。
「まさか!?」
ヒビの入った窓ガラスを慎重に壊していく。死体をずらすとそこには、ゆりかごが抱かれるようにして無事だった。血まみれだが奇跡的に潰れていないようだ。
「‥‥よし!」
ゆりかごを取り出そうとするが遺体が潰れた車体に挟まっている。無理に動かす事はできればそうすると遺体を破損する恐れがある。出来るなら、それはしたくなかった。
何か道具をと考えれば、一番使えそうなのはキメラに刺したままのナイフがある。
「これで‥‥」
決して、良い結果に終わった戦闘ではなかったが一人でも命を救えた事が心を軽くしてくれた。キメラからナイフを抜き取ろうと手を伸ばす。
だが、その伸ばした手がナイフを抜き取る事はなかった。
「がぁっ!?」
不意の衝撃と一緒に風景が一瞬で変わる。自分が吹き飛ばされたと理解したのは地面を三回ぐらいバウンドしてからだった。
体を起すとさっきまで居た場所に巨大な狼がいた。
「さっきの奴らの親玉かよ」
下手を打った。敵を倒して完全に油断していた。おかげで全身がバラバラになりそうなぐらい痛む。
(「!?」)
身体を起そうとして立ち上がれない。痛みは全身にあるが立てなくなるほどではない。
即座にAIから送られてくる情報を検索して網膜に情報が直接映しだされる。
結果は、リンドヴルムの脚部のコンディションを表す部分が真っ赤に染まっている。他にも生身と全体の複数個所にイエローシグナル、今の状況では考えられる限り最悪だ。
さっきの三匹にすら絶好の状況で戦いながら手間取ったのだ。その上、戦いに最も重要な動きの要である足が動かない。相手は体重も膂力もスピードも先程の三匹とは段違いだ。
「くっ」
獲物が反撃して来ないと知ると巨狼はいっきに突撃してくる。
それを無様に転がって避ける。なりふりなど構って張られない。まるで剣のような牙の群れがすぐそばを通り過ぎる。
だが、安心できない。即座にヒザ立ちの姿勢で身体を起し巨狼に向き直る。回避できないわけではない。どうにかして反撃の糸口を掴むまではこれで凌ぐしかなかった。
巨狼が向きを変えこちらに狙いを定めてくる。
ありがたい。今の足の動かない状況では狙いを定められるよりも連続で攻撃を仕掛けられる方がよほど厄介だ。
(「いける!」)
腕に込めて横に飛んで回避しようと瞬間だった。
「――――」
真後ろから聞えた赤ん坊の泣き声が回避した時に巨狼がトラックに激突する光景を思い起させた。とっさに体が動きを止める。
その時には巨狼の姿が視界を埋め尽くしていた。
「――っ!?」
内臓が押し潰されるような感覚と骨の軋む音が頭の中を埋め尽くした。どんな跳ね飛ばされ方をしたなどと確かめる余裕もない。急速に遠のく意識を保つので精一杯になった。
かろうじて認識できる視界には、リンドヴルムのコンディションモニターがオレンジとイエローでまだらに染まっていた。
そして、巨狼は動かなくなったこちらに興味を無くしたのか泣き叫ぶ赤ん坊の方へのゆっくりと向かっていく。
「っざけんなよ!」
リンドヴルムが嫌な音を立てながら上体を起す。砂嵐が混じりはじめた通常スクリーンの向こうに巨狼の姿を認めて近くにあった石か何かを拾って力の限り投げつける。
たぶん、子供の投げる野球ボールよりも遅く勢いのない石が巨狼に命中する。キメラの表情の読み方なんか知らないが多分、うっとうしいと思ったのだろう。巨狼が目標をこちらに変えた。
「‥‥ああそうだ、それでいい。こっちに来い、怪物」
どこで聞いた知識だったか、生き物は危機に陥ると普段抑えている力を全て使い始め時間が数十倍に感じられるという事態が起こるらしい。
(「‥‥ああ、今がそうなのか‥‥」)
力を込める細かい動作までハッキリと分る。そして、自分がもう体を動かすための力がない事も同時に悟っていた。
死んだな
悠長にそう思った。一つ心に浮かんだ未練は、高校の購買部でやきそばパンの争奪戦に勝てなかった事だった。
思わず、苦笑がもれる。死ぬ間際に考える事にしては下らな過ぎる。だが、別の事を思い出すヒマもなさそうだった。巨狼が自分目掛けて飛び出してくる。あと、数秒後には自分はこの世にいないだろう。
ターーーーーンッ!!
一発の銃声が世界を切り裂く。遠かった風景がいきなり元に戻る。
「‥‥なんだ?」
さっきまで自分めがけて突っ込んでこようとしていた巨狼の体が唐突にブレて倒れた。
「はああああああああああっ!」
剣を振りかざした男が空から掛け声と共に降ってきた。その剣が巨狼へと振り下ろされる。突然の事態に何が起こったのか頭が追いつかない。
「おい、大丈夫か?」
絶命した巨狼を後にして男が何か言っていた。それが自分にかけられた言葉だと理解するのに十秒以上掛かった。
『――キメラの方はどうなった?』
「っと、ああ、終わったぜ。それより‥‥」
男が通信機に向かって話しかけていた。何を話してるのかは分らなかったが、一つだけ分った事がある。
(「‥‥ああ」)
俺は助かったんだ。
その事を認識したらだんだん、視界が暗くなってどっちが地面だったかも判らないくなっていた。
「ええ!?おい、しっかりしろ!」
どさっ、という音と何か叫ぶ男の声が聞える。だけど、今はどうでもよかった。
今はただ、何も気にしないで意識を闇へと落とした。
☆
この前の事件から1ヶ月たった。
「このクソ虫共、今日は俺にとって最高の日だ。何が最高か分るか?今日でクソ臭い貴様らと晴れてお別れ出来るからだ」
俺は今日の午前中で訓練を終えて明日にもこの訓練所を後にしてラスト・ホープ島に向かうことになっていた。
あの時の事件の顛末だが、銃のマガジンが抜けなかったのは、リンドヴルムを装備した状態で強く握りすぎたせいでグリップの辺りのフレームが歪んでいたらしい。リンドヴルムの方もいきなり脚部に負担掛かったせいで関節の一部が歪んだのが動けなかった原因だったらしい。
フレームは無事だったので他の箇所のダメージも簡単な部品交換で修理できたので三日後には元通りだった。ついでに言えば、俺自身も一般人じゃ重傷間違いなしでも能力者にとっては、たいした事のない怪我ですんでいて翌日には、一日休んだ追加分の課題と一緒に訓練を再開させられた。
今回のような事件は珍しくもない。現在は世界中のいたる所で起きているありふれたものだ。だが、今回はたまたま近くに俺やトラックに乗っていた家族が運悪く居合わせてしまった。
本当にただそれだけの事だった。
それからは本当にいつも通りに吐きそうなほど走らされて、銃を撃って、格闘技の訓練受け、戦術や近代の歴史についての授業を受けていた。
いや、少しだけ変わった事があった。今の状況が望ましいとは思えないのに逃げ出す気がまったく起きなくなった事だ。
「‥‥本当、どうしたんだかなぁ」
「こらそこ!何をしてる!?全員その場で腕立て百回!!」
ついついボケッとして軍曹に怒鳴られる。しかも、俺のせいで腕立て追加になって一緒に訓練していた奴らから突き刺さる様な視線がプレゼントされる。
「と、普段なら言うところだが今日は特別に勘弁してやる。有り難く思え」
三度の飯よりも俺たちに胃液を吐かせるのが好きな軍曹からそんな事を言われて全員がきょとんとした。
「ふっ、これ以上、何か言っても貴様らのカスほどもない脳みそじゃ、憶え切れんだろうからこれで最後にしてやる」
最後まで軍曹の物言いは上から目線で俺たちを人間扱いしないものだなおい。
「今日でここの反吐地獄からは開放されると思って貴様ら浮かれているが、よくそのカスミソに刻み込んでおけ。本当の地獄は貴様らがこれから向かう先にある。今日までの事が天国に思えるほどの地獄がな。今此処で雁首揃えてる奴らが、また雁首揃えていられるとも限らん」
淡々と語る軍曹の様子は俺達を三ヶ月みっちりシゴキ上げてきたサディストの言葉とは思えなかった。それはこの世の地獄を体験した人間だけが持つ独特の雰囲気、とでも言うのだろうか、しみじみと粘り付くような不安が足元から這い上がって来るような気さえした。
「この戦争が終わった時に貴様らのうちの十人に一人が五体満足で生き残ってれば最高なのが今の世界の現状だ。お前達のような若い奴らを戦争に向かわせなければならないのは俺たち大人の不甲斐なさだ。大いに恨め、そして、世界を憎んで良い。だが、決して生きるのを諦めるな。戦場では諦めた奴から命をなくすぞ」
俺達のほとんどが死んでしまうのが今の世の中らしいが、言葉の意味は理解できてもそれを実感はしてない奴がほとんどだろう。俺自身も1ヶ月前の事件がなければ、多分、その一員だったはずだ。
「以上だ、解散!!」
その一言で訓練生たちは三々五々に散っていった。明日には全員どこかの基地や戦線に投入されるのだろう、三ヶ月だけの付き合いだったがなんだか寂しくもある。
「やあ、久しぶりだね。少年」
俺も少ない荷物をまとめるために兵舎へ向かう途中で意外な、というほどでもないが人と再開を果した。トーマス・ヘッセ中尉、階級的には俺よりはるかに上だが、俺を今の訓練所に叩き込んでくれた張本人なので敬意は持てそうにない。
「なんですか?」
敬語は使ってはいるが不満を隠しきれてないのは自分でもハッキリ分かる。
「まあ、そう構えないでくれ。今日はたまたまだ」
「そうですか」
「ここで立ち話もなんだ、どこか、落ち着ける所にでも」
俺たちは空箱を広場の端に置いただけのベンチに腰を下ろす。一応、コーヒーと言う名前の黒いだけの湯を持ってきた。
「最近は御活躍だったらしいね」
「嫌味ですか?」
一ヶ月前のキメラとの戦闘は活躍と言えるほど誉められるものじゃないのは自分でも承知している。
「初陣でキメラ三匹は上出来だよ。もう少し、誇ってもよいだろう」
「そうですね」
むしろ、飛び出すのが遅くなって人を死なせた事の方が心の底から後悔してる。多分、この罪悪感とは一生付き合っていくことになるかも知れない。
「君が守った赤ん坊は、特に異常はないそうだよ」
「‥‥そうですか」
心うちを見透かされているようでなんだか腹立たしい。だからと言って、今のイラつきをぶつけるのもお門違いだ。こんな状況に放り込まれたて納得がいってなくてもだ。
「‥‥君の責任ではない。そう落ち込むな」
「じゃあ、誰の責任ですかっ!?」
「強いて言うなら、君にその役目を押し付けるしかない我々の無能の責任だ‥‥」
「じゃあ、なんで!!」
俺をここに入れたのかというセリフを途中で飲み込む。
「そうだ、我々は君達のような者には才能があるから戦えと言う、君達が抱く気持ちなど全て無視してな。何故か、それが今の世の中に必要だからだ!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「だがね。世界の全ての人間がただ無責任にそう願っているわけではないのだよ。戦争に出るのは軍人の役目だ。国やそこに住む人々の財産と平和を守るため、ひいては自分達の大切な人間のためにね。そして、そのために時には自らの命を捨てるのも、その中には君達のような子供も含まれているはずなのだ」
最初に会った時とはまったく違う顔を見せる中尉に思わず言葉が出なくなる。その表情も悔恨、悲哀、憤怒と様々な感情が混ざりあっているようだった。
多分、それこそが中尉の、トーマス・ヘッセという男の軍人としての矜持なのだろう。
「ふむ、年甲斐もなく熱くなってしまったね。君を今の状況に追い込んだ私にどんな思いを抱いても構わない。だが、憶えておいてくれ。誰もが、漫然と君達を生贄に捧げるのをよしとは思っていないと言う事をね」
自分でも信じられないくらい、中尉の言葉を穏やかな気持ちで聞いていた。
まったくだ、まるで世界で良心があるのが自分だけみたいな慢心があったのだろう。誰にだって欲しくても届かないものはある。
それが自分にとって普通でいる事であり、隣の男には理不尽に抵抗するために力と言うだけだ。だから、精一杯の気持ちでこう言って席を立った。
「‥‥分りました。憶えておきます」
「‥‥君は、いい傭兵になりそうだな。正規軍への編入を考えるべきだったかな?」
「たぶん、そっちじゃそっちにいたら脱走してると思いますよ」
席を立った時にはお互いに苦笑すら浮かべながら言葉を交わしていた。もう、お互いに会う事もないかも知れない。それでも、今日の会話は忘れる事なく自分の心の中に刻まれた。
今はその事実だけで十分だ。
「貴君の武運長久を祈る!」
中尉も席から立ち敬礼で見送ってくれた。俺はと言えば、ただ無言で少しだけ拳を掲げただけだ。
だが、それでもお互いに百万の言葉を交わすよりも気持ちは通じたと思えた。
そして、俺は荷物をまとめるために兵舎へと足を向ける。
空を見上げれば今日も、空は青く澄んで広がっている。季節は三月、高校の同級生たちはもうすぐ二年生だ。そして、日本ならそろそろ桜の咲く季節だろうか、それがとても懐かしく思える。
☆
日本のみんな、いまどうしてますか?元気にしてますか?
俺はこれから戦場に向かいます。
正直、怖いです。今すぐにでも逃げ出したいです。
もっと、普通にやりたい事もいっぱいあります。
でも、納得できない事は沢山あるけど、一つぐらいは納得できる事があったから。
だから、早くこの戦いを終わらして、絶対に生き残ってやる。それが、今の俺の一番の目標だから。
その日も空は、とても青かった。
あれが運命の日 了
テーマ : ヽ(゚∀゚)ノいえ−い☆ - ジャンル : 日記
コメント
No title
No title
ついに・・・ついに1話完結作品が登場した!感動した!(ぉ
全体的にだいぶ読みやすくなったぞ!
内容も面白くなった!
前の文だとナレーション?部分がナレーターっぽい人の第三者視点だったり、
主人公視点だったりコロコロ変ってたから読みにくかったんだけど
今回は主人公視点固定になってるのがだいぶ読みやすくなった。
こっちのほうが主人公の感情面でもわかりやすいし。
1万文字オーバーしてるってことだけど、
テンポが悪くなかったからそれほど気にならなかったな。
改行がWeb向けの位置でされてるわけじゃないのが
若干読みにくいけど
(Webだと幅の限界が来る前に改行させるほうが読みやすい)
本とかだったらおそらくこのままのほうがいいんだろうなー。
あとさりげなく今までに比べて誤字(誤変換)が大幅に減ってるなw
全体的にだいぶ読みやすくなったぞ!
内容も面白くなった!
前の文だとナレーション?部分がナレーターっぽい人の第三者視点だったり、
主人公視点だったりコロコロ変ってたから読みにくかったんだけど
今回は主人公視点固定になってるのがだいぶ読みやすくなった。
こっちのほうが主人公の感情面でもわかりやすいし。
1万文字オーバーしてるってことだけど、
テンポが悪くなかったからそれほど気にならなかったな。
改行がWeb向けの位置でされてるわけじゃないのが
若干読みにくいけど
(Webだと幅の限界が来る前に改行させるほうが読みやすい)
本とかだったらおそらくこのままのほうがいいんだろうなー。
あとさりげなく今までに比べて誤字(誤変換)が大幅に減ってるなw
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誤字も減ってるし・・・成長したなあw。
文章、前のプロローグに比べると随分落ち着いた感じがするよ。良いね!
全体を通してテンポが似てるから
センテンスでテンション変えるともっと面白くなるかもね。
具体的には戦闘シーン。
説明セリフをもうちょっと大胆に削って(名詞止めなど)
スピード感出すと面白いかもしれないw。
ラストはちょっと静かな雰囲気を出したいのかな。
段落を変えて、もっと思いっきりトーンを落としていいと思うよ。
青空の記述が近い所で2重に出てるけど
片方は削った方が雰囲気が出ると思うな。
----
そいやFC2のサービスに「FC2小説」って言うのがあるんだけど
使ったことは無いから勝手は良くわからんけど
小説を読み返しやすい仕様になってるっぽいよ。
ブログで書いた小説が溜まってきたら
そう言う小説用のネットサービスで発表していくのも良いかもね!